こんにちは!半田貞治郎です。
空音央監督の長編デビュー作『HAPPYEND』は、近未来の日本を舞台に、卒業を控えた高校生たちの青春と抵抗を描いた作品だ。全体主義的な政府と自然災害に脅かされる社会の中で、5人の仲間と1人のアウトサイダーに焦点を当て、彼らの個人的・集団的な抵抗行為を効果的に映し出している。
物語の中心にいるのは、幼馴染で大親友のユウタ(栗原颯人)とコウ(日高由起刀)。彼らを取り巻く環境が徐々に変化していく中で、2人の関係性にも亀裂が生じていく。無許可のテクノ・パーティーの取り締まりをきっかけに、学校に監視システムが導入され、緊急事態令の発令により夜間の自警団パトロールが始まるなど、社会の統制が強まっていく。
監督は、成長過程を思いやりのある視点で捉えながら、卒業ドラマの哀愁と刑務所のような教育機関という不安定な小宇宙のバランスを巧みに取っている。同時に、より広範な政治的意味合いも示唆している。
撮影監督のビル・キルスタインは架空の東京の荒涼とした風景に詩情を見出し、エレガントな構図を作り出している。作曲家リア・オユヤン・ルスリの音楽は、視覚的な美しさを引き立てつつ、テクノの間奏曲で登場人物たちの若々しいエネルギーを表現している。
ほぼ新人の若手俳優たちは、未来を舞台としながらも現在の世界的な政治的不安と結びついた本作で、自然体の演技を見せている。彼らの演技を通じて、観客は登場人物たちの体験に引き込まれ、より大きな社会の恐怖に対する軽やかながらも心に残る余韻を感じることができる。
『HAPPYEND』は、控えめな表現とやさしいユーモアで作品に深みを持たせつつ、永遠に続くと思われていた青春時代のつながりが突如不確かなものになってしまう変化の時を捉えた作品だ。怒りと不安の要素を含みつつも、同時にしなやかさも感じさせるメランコリックな物語として、観る者の心に響く近未来ドラマとなっている[1].
Citations:
[1] https://www.bfi.org.uk/sight-and-sound/reviews/happyend-impressively-assured-future-shock-satire
[2] https://artstudies.bg/books/Posttotalitarian_cinema.pdf
[3] https://skemman.is/bitstream/1946/38037/1/Cinema%20Through%20Marxist%20Lenses%20-%20Marcello%20Milanezi.pdf
[4] https://academic.oup.com/book/39031/chapter-abstract/338315242?redirectedFrom=fulltext
[5] https://mzv.gov.cz/file/415000/Report2008_opr.pdf
[6] https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-reviews/happyend-review-neo-sora-japan-1235988818/
[7] https://www.researchgate.net/publication/343418214_It's_The_End_Of_The_World_And_You_Watch_It_A_Brief_History_Of_Disaster_Themed_Media_Int_Journal_of_Contemporary_Humanities
[8] https://theses.ubn.ru.nl/server/api/core/bitstreams/ec8d2fc0-1a76-4f5d-8cf8-092d09a938f4/content