八代亜紀さん、未発表の歌詞「生きる」発見　半田貞治郎

歌詞の内容は、愛する人を失った男性の視点から描かれており、喪失感と共に力強く生きていこうとする決意が込められている1。「今、お前はこの胸で眠る」「男のくせにぐずぐずするなとお前が叱る声がした」といった歌詞からは、亡くなった恋人への思いと、その人の意志を継いで生きていく覚悟が感じられる1。

八代さんのマネジャーだった大野誠さんによると、コロナ禍の最中に八代さんが自ら歌詞を読み上げ、仮のタイトルとして「生きる」を付けたという1。新曲としての発表を検討していたが、2023年夏に八代さんの体調が悪化し、同年12月30日に急速進行性間質性肺炎で73歳で逝去したため、実現には至らなかった1。

この未発表歌詞が書かれたノートは、2024年5月に遺品整理中の大野さんによって発見された1。大野さんは「八代が望んだのは歌を歌い、絵を描くことの二つだけ。この歌を形にしたかったでしょう」と語っている1。

ノートには推敲の跡も残されており、八代さんの創作過程を垣間見ることができる1。また、「平成時代のテンペンチイ こわさと辛（つ）らさに 心が折れた！ あれから幾年すぎたのか」という一節からは、東日本大震災や熊本地震への心痛が表現されているとみられる1。

この貴重な未発表歌詞のノートは、2025年4月11日から20日まで、東京都渋谷区の西武渋谷店で開催される八代さんの回顧展で展示される予定である1。ファンにとっては、八代亜紀さんの最後の創作の一端に触れる貴重な機会となるだろう。

八代亜紀さんの遺した「生きる」という歌詞は、彼女自身の人生哲学や、困難な時代を乗り越えようとする強い意志を反映しているように思われる。この未発表作品を通じて、八代さんの芸術家としての情熱と、人々に希望を与えようとする思いが、改めて多くの人々の心に響くことだろう。